骨って軽いんだね。初めて知ったよ。爺ちゃんを背負って病院に連れて行った時はもっと重かった。あんなにあっさり死んじゃうなんて考えたことなかった。あ、いや……嘘、かな。爺ちゃんも年だし、入院してたし、いつかは来るってわかってた。でも、その時がどんな感じかなんて、想像できなかった。
 爺ちゃんさ、俺のたった一人の家族だったんだよ。たぶん他の人から見たらろくでもないかもしれないけど。親もいなくて、爺ちゃんと二人暮らし。親の顔も覚えてないんだよな、俺。伏黒も? そうなんだ。じゃあ、これは俺たちの秘密な。俺が言ったこと、内緒にしてくれよ。なんか恥ずかしいから。
 ……うん。寂しいよ。爺ちゃんに言われたんだ、みんなに囲まれて死ねるようにって。すごくさ、心に刺さるっていうか……最初はびっくりしたけどさ、仕方なくなるんじゃなくて、自分から呪術師になってやろうって思ったんだよ。人を助けろって、遺言だしね。
 寂しいなあ、だって爺ちゃんが死んだ時、俺、そばにいたんだよ。爺ちゃん、独りで死んだんじゃないんだよ。でも、俺じゃ足りなかったのかな。そりゃあ少ない人数だけどさ、ほんとなら自分の子どもに看取られるはずだったのに、先に死なれたなんて運がなかったかもしれないけど。でも、孫がいるんだよ。爺ちゃんだって独りじゃなかったよ。俺を独りにしなかったよ。ずっと――って言うほどでもないか、俺、あんまりいい子じゃなかったし。爺ちゃんも俺に好きにさせてたところあるから。でも、爺ちゃんはそばにいてくれたんだよ。俺は孤独じゃなかったよ。
 うん。わかってる。爺ちゃんはそういう意味で言ったんじゃない。でもさあ、俺もいたんだよ。独りじゃなかったんだよ。俺、爺ちゃんが死んで、初めて独りになっちゃったんだよ。
 ……ありがと。もう独りだなんて思ってないよ。みんながいる。俺、高専に来てよかったって思ってる。
 ――骨って軽いんだよ。知りたくなかったなあ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

inserted by FC2 system