ハアイ、お父上。元気にしてた? しばらく見ないうちに白髪が増えた? 皺も増えたんじゃない? ん?
 ……帰ってくるに決まってるじゃん。そう躾けたのが誰なのか、もう忘れたの? 年だからボケちゃった? じゃあちょうどいいよね。実はちょっと話があるんだけどさあ――――家督、僕に譲ってほしいんだよね。今すぐ。ほら、卒業証書もあるよ。
 ……なんで? 僕のことそのつもりで育ててたでしょ? 僕が自分から進んでなりたいって言ってるんだから、ここは諸手を挙げて喜ぶところでしょ? ちょっと早まったくらいでぐちぐち言わないでよ。せっかくやる気出したのに。
 ああ、兄上たちのこと? 別にどうもしないでしょ。誰が僕に勝てるの? そもそも六眼と無下限を併せ持った術師の継承権は誰よりも優越するはずでしょ。お父上が知らないわけないよね。だから僕が生まれて喜んだくせに、怖がって遠ざけてたね。立場を脅かされるのが怖かった? だって僕が成人したら自動的に隠居することになってるもんね。数百年振りの奇跡の子の父親としての栄誉だけじゃ不満だった?
 ……くだらない。まったくもってくだらない。カビが生えた伝統にしがみついて何になるの? 僕を作り出すために何してたか知らないとでも? それも終わりにするから。お父上はお人形が欲しかったんだろうけど、おあいにく様。
 あ、言い忘れてたけど、見合いは全部断っておいて。僕、結婚するつもりないから。……いいけど別に。僕に敵うならね。そんな奴、この家にいないでしょ。
 ……その話は関係ないだろ。俺が一人で決めたことだ。友人は選べなんて、オマエに言う資格があるのか? 生まれた時から家の人間しか側に置かず、外出も制限しておいて? ……違う。情けをかけたんじゃない。あいつに情けなんかない。俺に友人はいない。次に会ったら殺す。それでいいだろ。
 じゃ、決まりね。今日から僕が第■■代、五条家当主――最後の当主だ。

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