下手に五条が後見人っぽく資金援助すると行政の支援が伏黒家に届かなくなり、津美紀は空元気で明るく振る舞い、恵はたったひとつしか違わないし血も繋がらない津美紀が殊更に姉ぶったり母親代わりになりかけているのが嫌で荒れ、五条もまともな家庭を知らないから気が回らない

小学生の頃、津美紀が夜こっそり布団の中で泣いているのに隣で寝ている恵も気づくけど聞こえない振りをするしたまに不器用に慰めたりするんだけど、津美紀がただ親のいない寂しさで泣いているのではなくて、義理の弟の姉でいることの辛さがあるのは知らない

恵なんていなければ、と悪魔の囁きが頭をよぎるたび、なかなか帰らない親を二人で待っていた時、もっと小さかった恵の指がぎゅっと津美紀の手を握って無言で玄関を見つめていたのを思い出して、姉と呼ばれたことはなくてもこの子の姉でいたいと思うんだよ

津美紀が呪われたのは、ちょうど恵が津美紀の背を追い越す頃だと思っている

恵が病室に来ると、眠ったままの津美紀は時が止まっているかのような錯覚を覚えるのに、日々自分の背は伸びていくし手のひらも大きくなっていて、やがて義姉を置いていってしまうのではないかと恐怖してほしい

同じ系統の幻覚を義勇と蔦子にも見ていたので、完璧に性癖ですね

恵は津美紀の義理の弟でいるのに反発するくせに、視野が狭まっているせいで、津美紀が自分の義理の姉でいることへ葛藤があるのではないかと考えないところが無意識の甘えで「弟」なんだよね。他ならぬ津美紀に弟扱いされてきたから

津美紀はそういう恵の無意識の弟らしい甘えを心の支えにして、姉でいることで自分の自尊心を保っているところがあって、ふとした拍子に共依存から共倒れになりかねないような、ぎりぎりの瀬戸際で伏黒姉弟は成立していたんじゃないかな

帰りの遅くなった恵が面倒くさそうに「ただいま」と言いながら家に入ると、返事がないし夕食の準備もなく、不審に思いつつ上着を脱ごうと襟に手をかけたところで倒れている津美紀を見つけて、そこから記憶は途切れ途切れになっている
気がつけば通話中のスマホを握りしめて津美紀の横に座り込んでいて、「僕の声、聞こえてる?」と五条に肩を掴まれながら顔を覗きこまれ、いつの間にか顕現した玉犬が心配そうに自分の周りをぐるぐるしているのも認識できなくて、ただ五条の銀河みたいな青い瞳に虚脱した自分が映っているのを眺めている

ミミナナの父であり兄であり、この世でたった一人の庇護者となった夏油と、伏黒の父にも兄にもなれず、そもそもなるつもりもなく、ただの後見人でしかなかった五条も対なのかもしれない

前に「未成年が子どもの保護者気取ってるんじゃないよ」と五条に言ってくれる人はいなかっただろうと書いたけど、そっくりそのまま夏油に跳ね返るし、夏油の方が本気でミミナナと擬似家族的になっていたぶん、なお悪い

恵は津美紀と人生の半分を共にしたくせに、津美紀の本心を見ようとせずに「典型的な善人」に置いたのはある種の神格化に等しく、義理の姉(赤の他人)だからこその思い込みなんだろうね

ともすれば失われた「母親」の片鱗を義姉に探していたかもしれない。恵も子どもだから身近な存在に投影しても無理はないし、でもそういう視線で同じ目に遭っている津美紀を見てしまうと自己嫌悪が湧く。なのに津美紀は理想の姉たろうとして時に母代わりにさえなろうとするから、言い知れぬ鬱屈がある

「どうして一緒に落ちぶれてくれなかったの」と真希を詰る真依はもう、置かれた環境から抜け出すことさえ考えられないほどの絶望感に苛まれている

地獄から連れ出してくれるのを待っていた桜、一緒に地獄で手を握っていてほしかった真依

真依はこれっぽっちも真希の決意を信じていないんだよね。諦観が完全に真依の心を砕いていて「私が禪院家の当主になってやる」と息巻く真希を眩しく感じることさえなく、ただ裏切られたという思いしかない。真希が当主になって真依のために家を変えようとしているかもしれないとは露ほども思わない

「東堂好きなんだよね、あの技の使い方いいよね」には15巻を思い浮かべながら「東堂はいいキャラしてるよね」と返すしかなかったな

煮詰めた関係性の姉妹が好きな友人に真希真依を勧め、「破滅する男が好き」には伏黒パパを勧めている 呪術は人間関係のバリエーションに事欠かない

桜は力があるのに逆らわないよう刷り込まれたせいで家に囚われていて、真依には力がないから逆らう気力もない

真依は高専に家系枠で入学になったことにけっこう複雑な心境なんだろうな。スカウトされるほどの術式は持っていないし、さりとて呪霊は見えるから普通の高校にも行けないし、なんとか家から逃げたくて高専に来ても家の力で入学していて、結局禪院家からは逃れられない

真希に呪霊が見えるようになる眼鏡を与えた人と真依の高専入学手続きをした人はまだ見ぬ父か母だったらいいなと思っている。家を出て行く真希を見送らないで直毘人と「わがままなんて珍しいな、お前も人の親だったんだな」とかやってほしい

夏油の五条袈裟については意図してやったことなのかわからなかったので今まで言及しないでいたけど、意図的な設定なら、互いにないものに憧れて真似しているうちに互いが入れ替わってゆく(そして互いの好きだった部分が失われて関係が破綻する)という要素を読み取ってもいいということですか

別のことを書こうとしていたのに五条袈裟のせいでどっかいったわ

隣の芝生は青いように、五条は夏油の倫理観を信頼して善悪の指針としたのに、夏油は自分からそれに違反し、夏油は五条の傍若無人っぷりを嗜めつつも羨ましく思っていたから五条と名のつく衣服をまとって無理してあんな箍の外れた言動をしていたのに、五条は(表面上は)大人の振りが上手くなってしまった

公式にないことを邪推してはいけないと自らを律していたのに公式が上を行く

人型の化け物だった五条はずいぶんと人の振りが上達したのに、夏油は人外に徹することができず、とうとう人からはみ出すことはできなかったね

力は正義で正義は力で、その力を振るわず「家族」に非術師の作ったものを食べることを許していた夏油は、血生臭すぎるきらいがあるにしてもおままごとじみていて、大義と呼んだくせに自分が正しいだなんて本当は思っていない

五条が何のてらいもなく「俺たち最強だから」と夏油に言えたのは自信ゆえではなく、初めての友人にはしゃぐ幼さゆえだと思うんだよ。夏油は理子を安堵させるためにそう言ったけど、五条に面と向かっては言わなかった。たぶん年頃の恥ずかしさがあった

五条にとどめを刺される直前に夏油が言った「心の底から笑うことはできなかった」は嘘というほどでもないけど自己欺瞞だと思うんだよ。本当は何もかも忘れて笑っていた瞬間はたしかにあったはずなのに、その後の自分を肯定するために、あるいは五条に殺される理由を与えるために記憶を上書きしたような

五条は自分の精神があんまりにも堅牢だから(傷つくほどの心を備えておらず、また育てることもできなかった)、他者のメンタルケアを軽視しがち

ミミナナが夏油に心酔しながらも精神的な不安定さはあまり感じなかったのに対して、中学生の伏黒はけっこう不安定で、五条ではそこを補うことはできなかった

ミミナナの望みはたったひとつ、夏油様の心の安寧だったのに、夏油は自分から投げ捨ててしまって、でも投げ捨てて大義に殉じようとする夏油だからこそ村から連れ出してくれたの

教団の「家族」は夏油の死後に意見が対立して仲間割れを起こしかけていた点から見て、必ずしも夏油の思想に共鳴していたわけではなく、痛々しいほどに教祖を演じ理想と信じたものに殉じようとする姿に惚れただけ

そういえばファンブックの「享年」表記は容赦ないなと思う(そこが好き)

五条・夏油・硝子と虎杖・伏黒・釘崎は対照されているというほどでもないけど、距離の取り方が全然違うんだよね。五条たちは男子2人と女子1人って感じだけど、虎杖たちは男女3人組という印象が強い

従来のジャンプ的ヒロイン要素をぶち込まれた伏黒がヒロインと呼ばれているのを見たことがあるけど、むしろヒロイン不在の物語なんだと思う

銀魂の神楽もヒロインらしくないけど、あれはジャンプ的ヒロイン像へのカウンター的側面が強いと思う

ヒーローらしさから解き放たれた虎杖、ヒロインらしさから解き放たれた釘崎

作者が少年だった頃、当時すでに古臭く感じていたキャラクター像をアップデートしたのではないかと思います

わたしはわたしの摂取した範囲でしか語れないのであしからず

野薔薇ちゃんがヒロインらしくないと思ったのは、虎杖・伏黒、伏黒・釘崎、釘崎・虎杖でそれぞれ共犯関係が成立していて、彼らは男2+女1ではなく男女3人という構図が強く感じられるから

五条が伏黒に「本気になれ、もっと欲張れよ」って言うけど、小学1年生から津美紀と二人きりの生活をしていたのなら欲なんて見せられないよね。津美紀は母親じゃなくて同じ「被害者」だもの

恵は弟でいたくないのに弟扱いされ続けていたせいで弟気質が芽生えていき、津美紀は姉でいたいのに姉とは呼ばれずめげそうになる瞬間があったのではないかと思っている

伏黒は己を抑圧することに慣れきっているんだよ

抑圧から解き放たれた伏黒が父親とよく似た顔をしているの、血は争えないって感じ

ヒロインと女主人公は違う、という話を中学の時に友達としていたな。ヒロインは男主人公の下に位置づけられているような印象があるけど、女主人公はあくまで主人公でその物語のトップ
少女漫画を読まない人間同士の会話だし昔の話だけどね

寝たきりの津美紀の籍だけ高専にあったりしない?
制服が違うからないか…いや転校したとか…

順平の「無関心こそ人間の行き着くべき美徳」は作者にしゃらくさいと言われてしまったけど、あれはまさしくポライトネス理論(語用論)のFace Threatening Actが一切存在しない世界のことなので、個人的にはけっこう好きなんだよね

五条と夏油は自分になくて、自分が欲しいと思っていたものを身につけた結果、互いの良さが失われるという皮肉が込められているのではないかと解釈したところで、つまりこれはO・ヘンリー『賢者の贈り物』のブラックジョーク版なのだと気づいた

『賢者の贈り物』は美談に着地するけど、あれは視点を変えれば、まさしく「地獄への道は善意で舗装されている」という話なんですよ

好きな作家はO・ヘンリーとモーパッサンなんだけど、当時は言葉を知らなかっただけでだいたい全部「地獄への道は善意で舗装されている」系の、悪意ゼロパーセントの些細なボタンの掛け間違いで悲劇へ転落する話だった
最終的にハッピーエンド(に作風が変わる)なのがO・ヘンリーで、バッドエンドがモーパッサン

伏黒に「死ぬ時は一人」と言っておきながら乙骨には「でも、一人は寂しいよ?」と言った五条、どうせ死ぬ時は一人なんだからそれまでは一人でいないで青春を楽しめと

夏油はミミナナに五条のことを「たった一人の親友」と話したけど、五条は学生たちに話していなくて自分の思い出の中に仕舞い込んでいるんだね。唯一の親友の末路を綺麗な思い出とは別名で保存するみたいに
夏油は青春の記憶を「心の底から笑えなかった」と上書き保存しているのに対して

わたしもあんまり呪術廻戦は暗いと思わないんだよね。暗いとグロは別だし、虎杖くんは死刑確定してるけど、特に根拠なくハッピーエンドな気がして全く悲壮感を覚えない

「魔法の発動に詠唱が必要な理由、精霊と交渉するためとか、心で強く願うための補助とか色々設定あるけど、「日常でうっかり発動させないため普段絶対に使わない厨二ワードを発動条件に設定しただけ」説に生活感を感じる。危険な魔法ほど詠唱が長いのも安全保障上の理由から。」
これができないのが呪言師で、逆の設定をしておにぎりの具でしか喋れない狗巻棘
狗巻家が呪術師としての血を絶やそうとしているのは、日常生活に支障が大きすぎるからだと思っている
狗巻家は血を絶やそうとしている最中だから、棘の両親は非術師(呪術師のことは知っている)か、少なくとも術式は持っていないんじゃないかな

恵と津美紀のツイートをまとめてnoteの記事に構成し直しているんだけど、あまりにも強い幻覚しかない

やや憂いを帯びた恵ちゃんのあの顔は、実の姉がいる顔ではなくて義理の姉がいる顔

恵がまともに親の愛情を与えられたのは実の母が生きていたわずかな時間だけで、それからは津美紀からの「愛」だったとして、では津美紀は誰から愛されたのか

津美紀の母親がどうして蒸発したのか今後出てくるのかなあ

甚爾は呪霊ではないし呪詛師ですらない、紛うことなき人間なので、五条は正当防衛とはいえ殺人を犯したことになるね
五条が明確に殺人を犯したのは「天井天下唯我独尊」と言った時で、かりそめの心が機能を停止したあたりだから良心の呵責なんて一切ないんだ
命を脅かされているという同じような状況で同じような年齢の虎杖は、かつて人だったものでもう人に戻れないものを「殺す」ことに抵抗があったのに、完璧に人間だった甚爾を殺すことに一切躊躇しないし後悔もしない五条は、やはり人の心が欠落している
呪詛師を殺すのはノーカンですか?呪術師の倫理観ちょっとわからない
仮にも現代社会をベースにした世界観だから殺人は普通にアウトだし、でなければ虎杖があんな表情をする必要なんてないよ、見た目が完全に呪霊と化していたのに
五条が「今の俺なら何も感じない」も何も、その手前で一線を超えているんだよ、夏油のいないところで一人で、誰も見ていないうちに

津美紀は恵を家族として愛したくて、恵は津美紀を家族として愛したくはなかったんだろう

五条と夏油は「失敗した」けど「間違った」とはちょっと違うというか、あの件で責を問われなければならないのは、特級呪術師と言えども未成年の学生のメンタルケアを怠った大人たちだよ
呪術師としての才に精神年齢が追いついていない。物分かりのいい自分を演じていた夏油が一見して大丈夫そうでも、一般家庭出身だからケアが必要だった。分かっていながら忙しさや人手不足を言い訳に放置した高専側の責任は否めない。
だから七海も伊地知も虎杖をきちんと学生/子ども扱いするのかな
高専にメンタルケア専門の補助監督(保険医的存在)は必須のはずなんだけど見当たらないし、結局は深刻な人手不足だから、強靭なメンタルを持つ学生だけを残して他はふるい落とす方向で固定させちゃったのかな
キセキの世代を才能あふれる若者から怪物にして青春を損なってしまった監督やコーチたちを思い出しますね

「共犯」の回は虎杖・釘崎、釘崎・伏黒、伏黒・虎杖で共犯関係が成立したことによりニ者間でそれぞれ罪を分かち合っている上に、伏黒と虎杖の気遣いのすれ違いも生じていて今なお解かれない(そしてこのままずっと解けなさそう)構図でとても好きです

五条と夏油の関係性は好きだけど、五条はキャラクターとしては別に好みではないというか、絶妙に苛立つ喋り方をしていて中村悠一うまいなって思う

0巻の内容をやらないとその後の過去編も渋谷編も深みが出ない。13巻まで読んでいまいち話が見えず、登場人物がなぜそこまで衝撃を受けるのか理解できなくて、後から0巻を読んで納得したからね

獄門疆のネックレスが出ると聞いて、千年パズルをぶら下げた遊戯の姿しか思い浮かばなくなった

友人とプレイしましたが、我々のベスト台詞は「そうだ、五条を燃やそう」です
呪術の脱出ゲーム、五条が絶対に本編では喋ってくれないであろう台詞があったのとてもよい

禪院甚爾と孔時雨のハードボイルドな術師殺し全盛期エピソードが読みたい。孔時雨が来日したてでヤクザといざこざを起こしていたところにたまたま甚爾(まだ妻には出会っていない荒んだ頃)が通りかかって腹いせにヤクザをぶちのめし、それから意気投合して賞金稼ぎしている感じの
「煙草いるか?」と孔時雨が火をつけると「いらん。臭いがきつすぎる」と甚爾が顔をしかめるのに少し笑って「鼻がよすぎるのも考えものだな」と煙を吐くのとかやってほしい

孔時雨の話はもうちょっとあってもよくない?
甚爾が死んだと聞いて、煙草を一服する間だけ死を悼み、その後はさっさと忘れて再び一人で仕事に向かうんだよ
甚爾の遺体を回収したのが孔時雨でもいいね

この前、五条と夏油が相手の好ましいと思った部分を互いに模倣するうちに入れ替わってゆく要素がある、とか書いていたらプリンセスプリンシパルの方が直球で来た

五条と夏油は関係が破綻した後に入れ替わっていくので、あれはいなくなった相手のかつて好きだった姿を留めようとする行為に似て、五条は夏油という傷跡を永遠に自分に刻み、夏油は五条という傷口のかさぶたを完治しないよう剥がそうとする

なんかだんだん自分に義理の姉がいたような気持ちになるし義理の弟もいたような気持ちになる
両方ともいません

いちばん気に入ってる文は「だから、津美紀にわかったような顔で肯定されるのに苛立ち、誰かを傷つけた時には肯定してくれないことに苛立った」ですね。あれ、紛れもなく「姉への甘え」だよ

順平くんの話をしていて「殺す前にたっぷり思い入れを作るのいいよね、作者わかってる」って言ったら「人の心がない」と返されたのだが、これは逆なんだよ。人の心を熟知しているから落とす前にきちんと上げておくんだよ、落下の衝撃を強くするために

この間、友人から地獄のnote呼ばわりされたし、さすがに自覚あるから

0巻映画化で個人的に最も楽しみなのは、どれくらい本編に合わせて変更してくるかですね。0巻の細かい点がどれだけ本編と「合っている」のかわからなくて、今まであんまり迂闊なことが言えなかったから

戦力を一カ所に集結させていれば勝ったのは夏油ということは、五条の「最強」は個人戦における絶対的勝者であり自分自身を守り抜く強さで、手札の数では夏油に劣る。それでも夏油が負けたのは、ただひとつの目的に徹することができなかった弱さ、自分の正しさを信じ切れなかったわずかな逡巡
わざわざ高専に宣戦布告しないで急襲すればよかったのに、どうにも律儀というか、非術師を鏖殺する目的に集中できていなかったように見える。高専の連中を殺したり、よしんば仲間に取り入れたとしても御三家や他の組織が控えているわけだし
「思う存分、呪い合おうじゃないか」は、勝った方の思想が正しいから自分が正しいと他人に認めさせたいということなのかもしれない。乙骨を仲間にせずとも一人で勝てたのに、自分をいちばん信じられなかったのは自分自身

夏油と七海は真面目の方向性が違うんだよね

灰原の遺体を整える硝子は傷つきはしなくとも寂しく思っていつもより余計に煙草を吸い、灰原の死を伝えに言って「お兄ちゃんも呪術高専なんか行かなければ」と妹に泣かれて返す言葉のない七海を慰める夏油も傷だらけで、唯一、五条だけが「残念だったね」と軽い言葉で済ませて能天気に術式を磨いている

灰原に妹がいたという設定が今まで記憶から抜け落ちていたのが不思議でならない
灰原は自分が呪術師になることに前向きなのにもかかわらず、呪霊が見える妹に「呪術高専へ来るな」と言い聞かせていたところ、お兄ちゃんポイント高い
灰原はやりがいを見出すと同時にその危険性もわきまえていたんだから、ただ陽気なだけではないんだね。いい奴から死ぬ定めだけど

自分はやりがいなんてない人間だと思っていた七海がそもそもなぜ高専に入学したのか、一度逃げ出したのに再び舞い戻ったのか考えると、やはりあれも夏油と同様に「自分はそういう人間である」と言い聞かせて自分を守っていたんだろう

七海のnoteを一ヶ月以上下書きのままにしているのは、日本語の切れ味が悪くて殺傷力が低すぎるからです。もうちょっと殺意を研ぎ澄ませたら公開します。そして本を出す

大幅加筆というか、同じテーマで全面的に書き直す必要があるんだよね、五条の善悪の指針の話
夏油を善悪の指針として自分の判断を丸投げしていたということは、夏油の正論をポジショントークと揶揄していたのは夏油が常に「正しい判断」を下せるのか試していたということだよ。自分が「正しい行いを為せる」と判断した夏油がそれにふさわしい人物であることを確認する作業、耐久試験
惜しむらくはその「正しい行いを為せる」夏油は五条と同じく未成年で、大人びた振る舞いをしていたとしても精神的に成熟しているとは言いがたかったということで、狭い社会で人間関係の経験値が不足している五条にはわからなかった。全面的な信頼というより盲目的な依存
夏油との口論は五条にとって恒例のお遊びで自問自答みたいなものだったのかもしれない。期待する答えをわざわざ夏油に回答させて安心していたような。だから夏油に「オマエの正論はその程度だったのか」と言わず(言えず)、「どうして」と自分たちが違う人間なのに初めて気づいたように問いかけた

夏油傑、自分に厳しすぎて、理想の自分が高すぎて、そこに追いつけない現実の自分に打ちのめされたところあるよね
だからただ一人になった友人の名を冠した袈裟を纏って、自分の最もよく知る「憧れ」に近づこうとするんだよ。理想を高く持った自分を周囲が受け入れていること自体が苦しくて、自分ではない自分になりたくて、なりたい自分を選んだら、ロールモデルは一人しかいなかった
精神的な幼さと閉鎖空間のせいで、五条が夏油と自他の境界を曖昧にしている節があると書いたけど、ロールモデルの方が近いかもしれない。互いが互いのロールモデルなら、入れ替わってしまったら成立しないんだよ
自分が嫌いな自分を周りは好きでいるというのもまたストレスなんだよね。だって私はそういう私が嫌いだから。理想の高すぎる私も、理想に追いつけない私も嫌い。だからなりたい私になったはずなのに、みんな元の私が好きなんだよ。今の私も元の私だって言うんだよ。そういう私は私が嫌いなのに
五条は自分を肯定して、夏油は自分を肯定できなくて、七海は夏油に近かったけど夏油と違って自分を肯定できていた
「初めての友だち」に舞い上がっていたのは五条だけど、「最強の二人の片割れ」だったことに舞い上がっていたのは夏油

七海の遺書、めちゃくちゃ読みたい

無配は記事ひとつにつき掌編を書いて、蛇腹折りにして水引をかけようかと思ったけど、書簡形式も捨てがたい
七海から夏油への書簡にみせかけた遺書とか恵から津美紀への書きかけで破り捨てた書簡とか読みたいじゃないですか あと、「愛すべきクズどもへ」と「かつて私の善悪の指針だったあなたへ」と「かつて私の憧れだったあなたへ」

そういえばわたしの中の五条は軽薄な振りをしながらも、本心はホークアイ中尉の「新しく生まれて来る世代が幸福を享受できるように、その代価として我々は屍を背負い、血の河を渡るのです」だなと思っている

大変都合のいい記憶力をしているので「呪術の私服がダサいのはBLEACHの正当後継者だから」と言われても全く心当たりがない。BLEACHのおしゃれで格好良かったところしか覚えていないし、他はすべて記憶から消しました

あまり呪術で二次創作する気がないのは話が続いているからなんだけど、既に終わった物語として七海の書簡形式な遺書日記は書きたいかもと思った

終わった物語には終わった物語の良さがあるんですよ。枝分かれするifを根絶し、何をどうしてもその結末しかありえないという厳然たる事実の重みが
だから五条と夏油の終わった物語についてたくさん書いているのです

二年生の夏、なんてことはない二級呪霊の討伐に片田舎まで赴き、都会育ちの七海が蛍を見たことがないと言うから灰原が「もう夜だし蛍を見に行こう」と言い出し、二人で蚊に刺されながら田んぼを飛び交う蛍を見て、たまにはいいこともあるかもと笑い合って、翌日、二級呪霊が産土神であることを知る

七海の遺書を収めた三つ折り名刺(新刊の無配)、もちろん表紙は百合の花

ありえるかどうかはさておき、五条には夏油の死体を人知れず運び込んだ霊安室で、さっきまで生きていて今や抜け殻に成り果てたかつての親友の隣に座ってまんじりともせず、夜が明けるまで喪に服してほしい。手持ち無沙汰すぎて吸えもしないのに煙草があればなあ、なんて思って、でも硝子だって呼べない
聞きたいこと、話したいことがたくさんあると思っていたのに、いざお前を目の前にしたら何を言えばいいのかわからないんだよ。10年って長かったな。一緒にいたのは3年もなかったのに。でももう、俺には一晩しか時間がないんだよ

五条と夏油、視点と切り口を変えると関係性の名前が変化してゆくので本当に困る

五条と夏油、信頼と呼ぶには行き過ぎて、依存では重すぎて、羨望や憧れのロールモデルほど純粋ではなくて、狭い世界で閉じた円環にそんなお綺麗な感情はない。かといって嫉妬は皆無、終幕も乾いていて、でも二人とも流すことのなかった涙で離別はほんのり湿っている。近づきすぎて壊れ、遠すぎて壊れた

五条と夏油が一緒に行ったのは沖縄の明るくて青い海なんだけど、その後は荒涼とした灰色の冬の海に一人で行っててほしい気持ちがある

津美紀と恵は海に行ったことがあるのかな まだ4人家族していた頃に遊園地とか連れて行ってもらったかな

五条に連れて行ってもらったなら、たぶんいちばん楽しんでいるのが五条になるし、恵ちゃんは冷めた子どもだからコーヒーカップを全力で回す五条を軽蔑するタイプだけど、津美紀が乗り込もうとするのを阻止しようとして五条の口車に乗せられてコーヒーカップで目を回す

作中で最もクズなのは津美紀の母親だったりしない…?甚爾は虐待の連鎖によるネグレクトで選択肢を知らないだけで愛情はあったし、五条は御三家の嫡男という特殊な環境ゆえの倫理感の欠如で、夏油も特殊な環境に追い詰められたけど、子どもを置いて消息不明の津美紀の母親はクズさに現実味がありすぎる
呪術界は俗世とは一線を引いた特殊で過酷な環境、悪しき因習や差別意識という「言い訳」があり、肯定はしなくとも同情する余地があるのに対して、津美紀の母親には何の情報もなくて、ただ古びたアパートに自分の娘と連れ子を置いて消えたという擁護できない事実だけが提示されている
津美紀の母親には現実の機能不全家族や貧困問題が見え隠れしていて、たぶん0巻の里香ちゃんに相当する要素がここに合流したのかな
津美紀の母親にも言い分みたいなものがあるのかもしれないし(ないかもしれないけど)、もしかしたら些細な事故・事件に巻き込まれたり、あるいはその辺の低級呪霊に食われたかもしれないけど、子どもにその事情を汲む義務はないからね
ろくに働かないDV夫から津美紀を連れて逃げて、生活のために再婚しようとしたけどやっぱりヒモ男に惹かれて甚爾と再婚、しばらく生活していたけど甚爾の非合法な仕事が遠因で人知れず死んで、残された恵と津美紀は母親として期待していないから探しもせず、甚爾と蒸発したことになっていたらどうしよう

五条は与え方がわからなくて、夏油は与えたものを返されなくて二人の関係は破綻するわけだけど、五条としては与えたつもりでいたから寝耳に水だし、夏油にとっては必然的な決別だから「そんなに驚くなんてやっぱりわかってなかったんだね」って余計に失望する

これは新刊に書き足したところなんだけど、五条は夏油に手を離されたと思い、夏油は五条に手を離されたと思い、その実、手を離したのは自分だったという

会社の人「土日で呪術廻戦14巻まで読んだよ!…七海が好きだったから作者のこと嫌いになりそう」

ようやく「俺はお兄ちゃんなんだぞ」のコマが拝めた

直哉が思ったより年上というか七海と同い年じゃないか ちょっと子どもっぽいぞ

禪院直哉の「弟より出来の悪い兄はいらない」は強固な家父長制の裏返しに見える。権力と責任はセットで、当主となる長男が皆を養わなければならない(最も優れていなければならない)から、それに足る能力を持たないならば長男ではないという

禪院家みんな抑圧されているというか、生まれた時からの価値観でガチガチに固まっている

やっぱ伏黒の持っている術式が禪院家最高ランクなんじゃないですか

それはそうとパンダに平然と「公害」と呼ばれている五条(箱入り)には笑いを禁じ得ない

禪院家は男でも幸せにはならないでしょう、世間から取り残された旧態依然とした環境下では
五条と直哉、自分が俗世から隔絶した環境に置かれて育ち、世間一般的にクズであることも自覚していて、同情も軽蔑も嫉妬も羨望も歯牙にかけず「だから何?」って言いそうなところがとても似ている

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