08



「炭治郎、大丈夫だった?」
 既に放課後になっていた。
 教室で待っていたらしい善逸に出迎えられ、炭治郎は頭を掻いた。
「大丈夫だよ。俺の石頭、知ってるだろ」
「そうだけどさあ」
「おい炭治郎、本当に大丈夫なんだろうな」
「うん、ありがとう――って、伊之助、今ちゃんと俺の名前言えたね!?」
「今そこじゃないでしょ!?」
 善逸が叫び、ほっと息を吐き出した。
「とにかく、無事でよかった」
「なんだ、大げさだな」
「友達が気絶したら心配もするでしょ。じゃ、早く着替えて帰ろう」
「うん」


 炭治郎が更衣室から出ると、校庭では部活動にいそしむ様子が見えた。しばらく目を細めて見ていた。
 去年、父が闘病の末に他界して、炭治郎は部活をやめた。高等部に進学しても、入るつもりはない。ひとつしか年の違わない妹、禰豆子もそうだった。この家が大事だったから、残されたものを守っていきたかったから。
 部活動に入らないと決めたことを後悔はしていない。だが、楽しげな姿を羨ましいと思わないわけではない。
「帰ったら、店の手伝いと六太の迎えに……」
 禰豆子はもう帰っているだろうか。今日は炭治郎が送迎の当番だったから、店番をしているだろうか。
 ――そういえば、夢で禰豆子を見たような気がした。赤い瞳が目の前に広がって――――
 ぱちん、と弾けるような音がした。
 急に音が戻ってきた。部活のかけ声が聞こえる。
 ――何だったんだろう。疲れているのだろうか。
 炭治郎は鞄を持ち直して、歩き出した。
 下駄箱の近くで善逸と伊之助が待っていた。
「今日は炭治郎のところでパン買って帰ろうかな」
「ほんと? 嬉しいな」
「たまにはパン食べたいし。俺は好きなんだけど、爺ちゃんが完全和食派だからさ」
「俺もだよ?」
「うん、炭治郎はちょっとよくわからない」
「やっぱおにぎりがいちばんうめえ」
「久さんのでしょ」
 伊之助は頷いた。
 伊之助は久という年配の女性の元に預けられている。口は悪いが、普段から大事にしているのだ。
「ババアのがいちばんうめえ」
「ババアなんて呼ぶなよ……おばあちゃんでしょ」
 善逸が呆れたように言った。
 話ながら歩いているうちに、炭治郎の家――かまどベーカリーに到着した。
 かまどベーカリーは、キメツ学園から最寄り駅に向かう途中にある。この時間帯は比較的、客の入りは落ち着いている。キメツ学園の生徒や先生が買っていくことも多く、朝方が最も忙しい。
 入り口でトングとトレイを取った善逸が店内を見渡す。壁際に沿った棚にパンが陳列されている。店の中央には机が置いてあり、本日のおすすめが載せられている。
 バターの匂いが鼻腔を満たした。炭治郎にとっては、これがいちばん安心する匂いだった。
「何にしようかな」
「あ、今月の新商品はこれね。クルミにはちみつのデニッシュ。朝ご飯にはちょっと甘いかな?」
「んー、そうだな……爺ちゃんも兄貴も甘いのは好きじゃないし……」
「ソーセージパイは?」
「それいいかも」
「紋逸、俺これがいい」
「伊之助は自分で買ってよね……」
 わいわい言いながら会計に進むと、制服のままの禰豆子が出迎えた。
「あ、善逸さん」
「禰豆子ちゃん今日もかわいいね!」
 瞬間的にでれっと鼻の下を伸ばした善逸に、炭治郎は真顔で言った。
「善逸、ちょっと気持ち悪いぞ」
「ひどい!」


 善逸と伊之助が帰ってから、保育園へ六太を迎えに行く。
 手を繋いで歩くと、二人の影が長く伸びている。
「今日のごはんは何?」
「何だろう。昨日がカレーだったから、今日はカレーじゃないと思う」
「ええーなんだろう」
 六太がぶんぶんと繋いだ手を振り回す。
「帰ってからのお楽しみだよ」
 そう言って、炭治郎が前を向くと、横断歩道の向こうに誰かが立っているのが見えた。
 ぞくり、と寒気がした。
 
 ――父が立っている。死んだはずの父が。

 植物のように穏やかで、背は高かったが病でやつれていた父が、そこに立っている。
 見間違えるはずがない。まだ、一年しか経っていないのだ。
「にいちゃん?」
 六太の声も聞こえない。手を繋いでいる感触を忘れた。
 汗が顎を伝って、制服の襟に落ちる。動けない。

 ごうっ、とトラックが通り過ぎた。

 はっと我に返ると、視線の先には誰もいなかった。
「にいちゃん、どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
 どくどくと心臓が不穏に脈打っている。
「さあ、帰ろう」
 強く手を握りしめる兄を、六太は不安そうに見上げた。
 足を踏み出す。信号が青になっていることを確認し、白線に足を乗せる。
 アスファルトを踏み、横断歩道を渡りきる。
 どっと汗が出た。
 さっき父が立っていた場所に、炭治郎は立った。
 ――誰もいない。
 見覚えのある風景。何も変わらない。
 小さな手が炭治郎の腕を引いた。
「にいちゃん、変だよ」
「大丈夫、大丈夫だから」
 自分に言い聞かせるように、炭治郎は歩いた。だんだん足が速くなる。我慢できなくなって、炭治郎は駆け出した。
「にいちゃん、まって」
 引きずられるようになった六太が炭治郎の腕を引っ張った。
「ごめん、六太、ちょっと我慢して」
 炭治郎は六太を抱き上げた。
 ――ここにいてはいけない。
 どうしてかそう、強く思った。
 走る。走る。
「早く帰らないと……!」
 どれくらい走っただろうか、ふと、炭治郎は立ち止まった。
 一五分程度しか離れていないのに、一向に家が見えない。
 冷や汗が、つ、と首筋を伝った。
 おかしい。さっきからずっと同じ風景を見ている気がする。冷や汗が止まらない。
 抱き上げた六太が重い。
 不安が伝播したのか、腕の中の六太も固く身体をこわばらせている。
 
『 炭治郎 』
 
 名前を呼ばれた。
 振り向いた炭治郎の目の前で、父が笑った。
「と、父さん――」
 父が腕を伸ばす。その手が炭治郎の首に巻きついて――――


09



「妙な気配がする」
 冨岡が眉をひそめた。
 二人で炭治郎の家に向かう途中だった。
 とりあえず家の様子を窺うことにして、学園からかまどベーカリーまで歩き始めて数分もしないうちに、冨岡が道の途中で立ち止まった。
「妙な気配って?」
 村田には何も感じない。悲しいことに、怪異への感度も一般人並みだった。
「嫌な感じがする」
「具体的に場所とか時間とかわかればいいんだけど」
 冨岡が〝見る〟のは、極めて曖昧な予感だけで、はっきりしたことは冨岡にもわからないらしい。
「とりあえず、かまどベーカリーに行こう」
「ああ」
 足早に道を歩く。街灯が薄闇に沈む住宅街を照らしている。
 しばらく歩いて、村田は立ち止まった。
 先を歩いていた冨岡が、再び立ち止まったからだ。
「おかしい。さっきから同じ場所を歩いている」
「えっ?」
 言われて、村田は周囲を見渡した。
 等間隔に並ぶ街灯。真っ直ぐ伸びた道路。
 そういえば、さっきからずっと真っ直ぐに歩いているが、信号のひとつも見当たらない。まだ夜更けでもないのに、通行人もいない。
「――もしかして、なんか、まずいことになってる?」
 冨岡は答えなかった。
 相変わらず宙を見つめている。
「おい――」
 冨岡が、突然宙を竹刀でガンガン殴り始めた。
「ちょっと冨岡!?」
「これがいちばん手っ取り早い」
 手を緩めず、冨岡は淡々と言った。
「ああもう! 相変わらずの脳筋だなお前!?」
 竹刀が何もない空間を殴り続ける。不思議なことに、見えない壁があるのか、竹刀がはじき返される。更に恐ろしいことに、バキバキと何かが罅(ひび)割(わ)れる音も聞こえる。
 冨岡が竹刀を握り直し、更に殴る。
 村田はごくりと唾を飲み込んだ。
 と、風景が突然、ぐにゃりと曲がった。歪んだ渦が出現する。
 ひずんだ空間の向こうに、炭治郎が見えた。子どもを抱え、誰かに首を絞められている。
「竈門!」
 冨岡がひずみに飛び込んだ。
 ええいままよ、と村田も意を決して後を追った。


          *


「ぐ、あっ――」
 父親に首を絞められている。
 炭治郎は父の手に爪を立てた。
 ――苦しい。苦しい。
 生理的に涙が浮かぶ。
 ――ここで死ぬのか。父さんに殺されるのか。
「このっ! にいちゃんを離せ!」
 腕の中で、六太が叫んだ。小さな腕を伸ばして、父を――父の姿をした何かを殴る。幼子の力では到底敵わないが、それでも殴り続ける。
 父の姿をした何かが炭治郎の首を離した。六太を掴む。
「六太!」
 それが六太の頭を掴み、地面に叩きつけた。
 炭治郎は地面に身を投げ出した。アスファルトに叩きつけられる寸前で六太を抱きしめる。
 ざらついたアスファルトが肌を削る。
 腹を蹴られた。
「いっ――がッ」
 息が詰まった。何度も腹を蹴られる。
 気を失っている六太を抱え、炭治郎は身体を丸めた。痛い。吐き気がせり上がってくる。身体を起こして逃げる暇もない。このまま殺されるのだろうか――
「竈門!」
 聞き覚えのある声がして、
 
 父の姿をした何かの首が飛んだ。

 忽然と現れた人影に、炭治郎は驚いて目を見開いた。
「冨岡先生!?」
 痛みも忘れ、がばりと身を起こす。
 父の姿を借りた何かが、さらさらと崩れていく。
 突然危機が去って、何がなんだかわからない。
 腕の中でぐったりしている六太を抱きかかえたまま、炭治郎は混乱した。
「え? 何? ていうか今どこから?」
 青いジャージ姿の冨岡が竹刀を構えていた。
 その後ろから、見覚えのある姿がひょっこりと顔を出す。
「む、村田さんも?」
「あー、これには深い事情が」
 村田が頭を抱えた。


          *


「冨岡先生」
「人違いだ」
 冨岡は炭治郎から目を逸らした。
「いや冨岡先生ですよね?」
「人違いだ」
 頑なに目を逸らしたまま、冨岡は答えた。いつもの青ジャージに竹刀。顔を隠しているわけでもない。他人のそら似で突き通すには少々――いや、かなり無理がある。
「その服装で言うのは無理があると思うぞ……」
 村田は小声で呟いた。
 ぎゅるん、と青ジャージの顔が村田の方を向いた。怖い。
 そもそも、この期に及んで、まだごまかせると思っている方がおかしい。
「すみません! 冨岡先生によく似ていたもので! 間違えました!」
「えッ信じるの!?」
 思わず村田は突っ込んだ。
 炭治郎は無垢な瞳で村田を見上げた。
「本人がそう仰るなら、そうなんですよね? 冨岡先生と同じ匂いがしますけど!」
「いや全然ごまかせてないじゃん」
 つまりは、他人であると主張する冨岡を尊重する、ということらしい。
 ハア、と村田はため息をついた。とても先ほどまで殺されかけていた人間には見えない。心臓に毛が生えているのだろうか。
 冨岡がわずかに顔をしかめた。
「まだ終わっていない」
 顔いっぱいに疑問符を浮かべた炭治郎から目を逸らしたまま、冨岡は鋭い視線を道路の先に向けた。
 どこまでも同じような風景が続いている。鏡合わせのように、気味が悪いほど等間隔で並んだ街灯。並ぶ住宅は多少の違いはあれど、ずっと向こうまで続いている。
 ――まだ、怪異の手の中にいる。
「竈門、立てるな」
「はい」
 炭治郎は立ち上がった。ふらりとよろめいたのを、村田は慌てて支えた。
「その子は俺が運ぶから」
「すみません、お願いします」
 炭治郎から子ども――弟らしい――を受け取り、背中に背負う。その重さに村田は少し後悔した。だが、怪我をしている炭治郎に運ばせるわけにはいかない。
 冨岡が竹刀を振るった。
 きん、と鋭い金属音がした。
 ぱくりと空間が裂ける。道路の先と似たような風景が重なって見える。ただし、今度は本物だ。
 炭治郎はぽかんと口を開けている。
「とりあえず行こう」
 こくこくと炭治郎は頷いた。


10


 自宅の玄関にたどり着いた炭治郎は、呆然と立ち尽くした。

 母が死んでいる。
 弟と妹が死んでいる。
 家の中は血まみれだ。
 事切れた死体の転がる中で、すぐ下の妹がうずくまっている。
 倒れる家族の上に、白い花びらが舞い落ちる。庭の八重桜が満開だった。
「禰豆子!」
 妹の名を呼ぶ。
 ぐるりと妹が振り向く。闇の中で爛々と光る瞳は、瞳孔が縦に裂けている。獣のような唸り声が、妹の口から漏れている。
 赤い瞳が、炭治郎を見つけて瞳孔を収縮させた。
「禰豆子! 母さん!」
 炭治郎は慌てて駆け寄った。
 途端、禰豆子が飛びかかってきた。
 勢いよく押し倒され、炭治郎はしたたかに後頭部を打ちつけた。
「痛ッ」
 ぐるる、と禰豆子が呻く。
 ぼたり、と液体が頬に垂れた。
 ――よだれだ。
 ぞっとした。
 とても少女とは思えない力で、禰豆子が炭治郎の腕を握って押さえつける。ぎりぎりと爪が食い込む。
「ね、禰豆子どうしたんだ」
 禰豆子は答えない。何も言わず、よだれを垂れ流して炭治郎の顔を見ている。
 視界いっぱいに広がった禰豆子の顔は、いつもの愛らしさをどこかに置いてきてしまったように、凶暴に目を見開いている。
「うわッ、これ何なんだ!?」
 村田の声がした。もがくような物音がする。
 振り返ると、二人はまだ家の敷地の外にいた。黒っぽい手のようなものが足を掴んでいる。その場に根が生えたように、足が動かせないようだ。
「このッ、邪魔するなッ」
 冨岡が悪態を吐いた。
 ぶん、と何かが空を切る音がした。
「ギャアッ」
 突然、腕を解放された。
 禰豆子が顔を押さえた。指の隙間から血が流れている。
「竈門!」
 冨岡に名前を呼ばれ、炭治郎は我に返った。
 素早く起き上がった。腹の上に座り込んでいた禰豆子の腕を掴む。
 禰豆子が両手を振り回そうとする。力いっぱい抵抗される。鋭くとがった爪が制服とその下の肌を切り裂いた。
「禰豆子!」
 浅く引っかかれながら、なんとか禰豆子を床に押さえつける。腕の下で禰豆子がぐるぐると獣じみた唸り声を上げる。
 荒い息をつきながら、炭治郎は視線を家の中に向けた。
 玄関で母が倒れている。弟と妹が倒れている。
 逃げようとしたのか、花子と茂が敷居の上に横たわっている。
 花子が、喘ぐような呼吸音を立てた。
 茂が呻く。
 まだ息がある。
 ――まだ、誰も死んでいない。
「ア、ァア」
 禰豆子が呻いた。抵抗をやめて、顔を両手で覆う。だらだらと流れていた血が止まった。しゅうしゅうと音を立てて、傷口が塞がっていく。
 バキ、と音がして、額に罅(ひび)が入る。そこから角が生えてくる。
「竈門! その刀を使え!」
 足下に、刀が一振り転がっていた。先ほど禰豆子の顔に当たったのは、この刀だったようだ。
「でも――」
「お前がやれ!」
 冨岡が叫んだ。黒い影がまとわりついて、家の敷地に入れないでいる。
 ――この刀で、妹を斬れというのか?
「いつまでそうやっている! お前がためらっているうちに妹は鬼になってしまうぞ! 家族を食い殺されたいのか!」
「は!? あれが鬼なのか!?」
 村田が驚いている声が聞こえた。鬼が何を指すのかは知らないが、冨岡が焦っているのだけは伝わった。
「でも、それじゃあ禰豆子は」
 声が震えた。
 それでも、手は刀を取った。
 震える手で柄を握る。鋼の刃が月光を反射した。
 ――この刀で、禰豆子を殺す?
「そんなの、無理です――!」
「やらなければお前が殺されるぞ!」
「でも!」
 雪にも似た、白い花びらが舞い落ちてくる。ひらひらと、夜闇を切り裂くように。
 庭の八重桜は満開だった。月の光を浴びて天に枝を伸ばしている。
 ――これは現実なのだろうか。
 頭が現実逃避を図り始める。
「立て! 竈門! でなければ俺がお前の妹を殺すぞ!」
 ――禰豆子が家族を殺す? そんな馬鹿な。何かの冗談だ。そうだ、禰豆子、悪ふざけはいい加減にしないと兄ちゃん、怒るぞ。
「生殺与奪の権を他人に握らせるな! 惨めったらしくうずくまるのはやめろ!」
 冨岡に一喝される。激しく厳しい物言いに、身が竦んだ。
 呆然と座り込んだまま振り向いた炭治郎の目に、月を背にした冨岡の姿が飛び込んでくる。黒っぽい手に掴まれて身動きが取れないにもかかわらず、身を乗り出そうとしている。
 苛烈に燃え上がる青い瞳が、炭治郎を射貫いた。
「選べ! 今ここで殺されるか! 妹を殺して他の家族を守るか!」
 嫌だ、と震える声で吐息に混じって吐き出した。嫌だ。嫌だ。どちらも嫌だ!
 震える手を地について、ぐっと身体を持ち上げる。顔を上げる。
 ――殺させない。絶対に。
 刀の柄を握り直す。汗で滑りそうになる。
 禰豆子がゆらりと立ち上がった。
 赤い瞳が炭治郎を見る。
「オ、オニィ、チャン」
 禰豆子が腕を伸ばした。鋭く長い爪が炭治郎に触れようとする。
「禰豆子――!」
 禰豆子の爪が迫る。
 炭治郎は覚悟を決め、刀を振りかぶる。

 その光景に、冨岡は目を見開いた。ぎちぎちと黒い影に足を締め上げられているのを、束の間、忘れた。

 誰かの手が炭治郎の手に添えられる。ふわりと広がる、洋服にはありえない袖。
 誰かの手が――大きな大人の手が包み込むように、炭治郎の手の上から刀を握りしめる。
 耳飾りが月の光を反射して、一瞬、きらりと光る。
 白刃が振り抜かれる。


 禰豆子の角が宙を舞った。

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