報酬はチョコレート。飴。どれも戦時下では贅沢品となった菓子だ。
配られたそれを受け取り、大柄な少年がさっそく銀色の包みを破った。薄くそばかすの残る顔がぱっと輝く。
未成年ばかりで構成された部隊では、煙草の代わりにチョコレートが与えられる。揃いの黒い軍服をまとった彼らが菓子で喜ぶさまは、可愛らしいと言ってもいいだろう。
とっくに成人した彼――波多野から見れば、彼らはまだまだ子どもだった。
「君、食べないの?」
隣にいた少年が訝しげに波多野を見やった。
「ああ、後で食べるよ」
波多野はチョコレートを眺める。何の変哲もない銀色の包み紙だ。数年前まで、高級品などでは決してなかった。今や立派な報酬と化したそれは、少年兵たちにとっては金貨にも等しいご褒美なのだろう。
銀色をしているから銀貨か。そんな、どうでもいいことを考える。
東洋人の中でもとりわけ幼く見える外見を利用し、ここに潜り込んだ波多野には馬鹿馬鹿しいが。
――ああ、煙草が吸いたい。
無意識に唇を舐めていた。あの煙が懐かしい。火をつけ、吸い込み、吐き出す。一連の動作を思い出す。
しかし、未成年と偽っている状態で煙草など吸えるはずもない。
肉体と精神を極限まで鍛える訓練を受けてなお、禁煙がこれほど辛いとは。
煙草代わりに口に放り込んだ飴は、苦みとはほど遠かった。