さようなら、俺の唯一の親友。
さようなら、僕の唯一の親友。
さようなら、僕たちの青春の亡霊。
二度と会うことはありませんように。
ペンを置くと同時に紙が燃え上がる。机を焦がすことなく、惜しみなく上等な紙を使った手紙だけが静かに、朽ちるように燃える。手のひらから生まれた温度のない炎が紙を舐め、端から虚空へ喰っていく。後には灰も残らない。
正真正銘、これが最後だ。
片時も忘れたことはなかった。
長らく名付けられることのなかった感情が、胸の内でさざ波を生んでいる。きっとこれも最後になるだろう。正確無比な機械のごとく世界を廻し続ける歯車に、心というものがあるはずもない。だからこれは一時の不具合(バグ)なのだ。
そのさざめきを、やはり名付けないでおくことにした。
――たぶん、それは〝愛(かな)しい〟と少し似ていた。