何度見てもサイコパス1期1話の構成はいいですね
初っ端から廃棄区画という必要悪、ドミネーターの効かない相手、言うことを聞かない部下、冷たい先輩、心が数値化されて筒抜けになった社会でなお犯罪に及ぶ人がいるというままならぬ情動を見せて、朱=視聴者にこの世界のディストピアの側面を叩きつける

シビュラシステム統治下で完璧さを装う社会の隙間を埋めるのは人間なんだよね
完璧に見えるシステムの完璧ではないところを補完して美しい虚飾を保つのが人間の仕事であり、だから監視官はこの社会の最も社会的地位の高い職業のひとつになる

1話がまずディストピア、続く2話がユートピアの側面を描くことで、この社会はほとんどの人にとってはユートピアだけどメインキャラ(見る側と似た価値観を持つ)にはディストピアが見えているという感覚を共有している

朱ちゃんってものすごくメンタル強いな、配属されて最初の事件でエリミネーターで処分された人間見ちゃったのに全然平気じゃん この時点で常人じゃない

1話ラストで被害者女性にパラライザー撃ったのが宜野座なの、改めて見てもすごい責任感強いなって思う
執行官って自分の手を汚さないためにいるのに自分で引き金を引くわけで、そういう自分の意思で社会の安全を保つという強い意志が監視官の適性なのかなあ

ドミネーターはネットが繋がらないところでは使えないし、所詮銃だからちゃんと当てないといけないし、薬物キメてたら威力半減するし、全然完璧ではないけど、その不完全なところがセキュリティでもあり(登録されていない人は使えない)人を裁くことの重さでもあったと思う
そういう意味で強襲型ドミネーターのことあんまり好きじゃない…あれドミネーターじゃなくて麻酔銃でいいじゃん ドミネーターを向けるのって裁判を兼ねてるんだよ?

いっそ頑ななほどシビュラの託宣に従う征陸とか宜野座とか、ドミネーターを撃たないという選択肢を選ばないんだよね
自分に選ぶ権利が実は与えられていることに無自覚で、それを最初から本能的に察していたのが朱ちゃん

PP1期をなぜSFと思わなかったかというと、まず画面に映る服装が現代と全く同じだし、同じような心理で同じような犯罪に走り、ハイテク機器はあれど捜査方法も大して変わらず、100年後の未来のふりをした現代への風刺的性格が強いと感じたんだよね
桜霜学園のクラシックな家具のくだりなんかまさにそう

「クラシックな家具」はむしろ好きな場面だけどPPPのノナタワーの密室に男ばかりいたシーンが無理なのは、風刺としてならよくできているけど制作側のインタビューを見るとそうでもないらしく無意識の偏見を感じたからですね
そうでないにしても制作側の意図が食い違ってるわけだし

宜野座の義手は刑事課から支給されているのか給料天引きなのか
どっちにしろ壊すたびに始末書書いてるだろうし、元監視官として完璧な書類を仕上げるので美佳ちゃんが怒りの行き場をなくしてそう 朱ちゃんなら苦笑いで終わりそう

新人でいきなり部下がいる状態ってすごく人格歪みそうなのに朱ちゃんはもちろん宜野座も耐えられたあたり、やっぱ監視官のメンタルの安定性、強靭さは尋常じゃないね

宜野座の人格が2期と映画で分裂した件で、霜月もストーリーを動かすためのいい駒にされてる印象だったのを思い出した
1期での出番が少ないのをいいことに朱ちゃんとの対比的な位置(降格処分になった宜野座が占めていたポジション)に置いて、性格をやたらきつくしてたよね

2期リアタイ時も思ったけど1期最終話見たらなんで美佳ちゃんがあの性格になったのかという疑問がまたよみがえってきた ちょっとやりすぎたんじゃないか

政治の話がしたいにも関わらず作中で議論が成立していないのが、朱の大切にしている民主主義的価値観を毀損しているように見えるんだよなあ
シビュラシステムの持つユートピアの側面を壊してでも社会を変革したい気持ちをもっと突き詰めてほしい、朱のエゴではなく それが真摯な態度ってもんでしょ
移民問題とか宗教とか、その主張自体はいいけど他の意見から見たらどう映るのかが欠如している センシティブな話題を扱っている自覚が薄いというか
あるいはポリコレやダイバーシティの自己矛盾の穴に落ちているのかも 不寛容にも寛容にならなければならないというあれ

わたしは政治の話も好きなのでサイコパスのメインテーマが転換したこと自体はついていけてますが、この政治の話をちゃんとやってなくてそれっぽい言葉を並べて結論ありきで作っているように見えるのがだめです ちゃんと議論して
移民問題を例にすると、ひたすら「差別される移民(難民)が可哀想」という視点で描かれていて、彼らを拒絶する日本人側の言い分が欠如しているわけよ
双方の意見を聞いて落とし所を探るのが真の解決なのに、ただ憐んで上から自由と平等を分け与えるかのような描写で、移民側からのアクションが足りない

PP1期、第1話でドミネーターが効かないのを見せてこの社会は全然完璧じゃないと示したのに、最終話が「完璧な社会」なのは最高に皮肉が効いててめちゃくちゃ好き
槙島という異物を排除し、首輪の外れた獣を追放し、再び完璧なふりをする社会で楽園の虚飾を維持するのに自ら貢献することを選択する

八王子のドローン工場で最終的な動作確認は人間がやる(人間でなければならない)ものだという設定がつまり、シビュラシステムに免罪体質者の脳を組み込むというトリックの暗喩じゃないか 全然気づかなかった

「成しうる者が成す」は適性のある人間を性別を理由に落としたりしないで適性通りに配置するという意味であって、たとえばケア産業に向いているのは女性に多いとか工場勤務は男性が多いとかの傾向を否定しないどころか、その偏りを推進しかねない側面もあるよなあと思った
採用をAIに任せたら、過去に男性を多く採用していたせいでAIが男性をその職に適切な要素と判断して男性ばかり採用判定したケースあったよね

ドローン工場で征陸がいじめによるストレス発散の話をしたら宜野座がキレたシーン、今見ると古臭い“刑事の勘”や父親への反発だけでなく、もしかしたら宜野座自身が潜在犯の子どもとしてそういう対象にされてきたせいなのかもと思った お前が言うなよって

コミッサちゃんのアバターかぶってストーカー男を捕まえる征陸さん、何回見ても笑う

何にでもなれたのに、公安局のA判定が出たのが自分だけだったからと監視官を選んだ朱ちゃんはやっぱり槙島と似ているよ
代わりなんてすぐ見つかる、そのためのシステムが統治している楽園のような社会で、安易な幸福と安寧を投げ捨てて代替不可能なものになりたいという

縢が朱に向いてないって言うけど、結末まで見ればこの上なく向いてるんだよね
感情でシステムを否定しながら理性で有益性を肯定する、システムを拡張しうる人材なんだもの

ドミネーターのメンテってどうしてるんだろ 管理してる人間がいるはずだからそれぞれの監視官、執行官で特徴があって、またこの人は乱暴な使い方を…とか陰で言われてるんだろうか

今見るとドミネーターのバッテリー性能が高すぎるし(パラライザー無制限って何?)、朱が片手で振り回せるほど軽量なのにデコンポーザーとかいうむちゃくちゃな機能ついてるしで、あれ本当にすごいアイテムだし、これを舞台装置に徹しさせたのもすごい

1期リアタイ時、ドミネーターが最優先で割り込み処理されるという描写で、シビュラシステムはスパコンみたいだなとぼんやり思ってた

スプーキーブーギーがアナーキストな設定、シビュラ的にはオッケーなんだ?と思ったけど、これが建前なのを見抜いた上でいいガス抜きとして見逃してたのかな 廃棄区画みたいに

廃棄区画があるのにユートピアを装うシビュラ社会のこと、当時はあんまりピンと来てなかったけど、今見ると設計思想が完璧でびっくりする
わざと穴を空けておくことでそこだけ監視すればよくなるし、社会に馴染めない人たちの逃げ場を用意することで平和的に“共存”している

冲方氏と政治的信条が合わないのは個人的理由だけど、3期からはやりたいことを欲張ってぎゅうぎゅうに詰め込んでシンプルに説明不足になっている上、広げた風呂敷の大きさがいまだに見えなくて、エンタメとしてダメだと思う 早く全貌を見せてほしい
やたらと話が込み入っているのも…複雑にすればいいってもんじゃないよ、一度見てメインストーリーを理解できるように作るのが商業作品でしょう
何度も反芻しなければ理解できないように作るのは自己満足

タリスマンの中の人が無職扱いなところで10年前の作品なのを思い出した 今ならVtuberと呼ばれるんじゃない?

宜野座の「常守の盾になりたい」発言に雰囲気で感動しながらも釈然としなかった理由がわかってきた
朱のメンタルの強靭さは精神衛生至上主義の作中においては最強の武器だし、そもそも物語の既定路線として朱の色相が濁らないのが確定しているから、守ってもらう必要なんかないんだよ
自分も狡噛も執行官に降格になり、青柳は死に、朱のメンタルへの負担を懸念した発言だと最初は思ってたけど、そこがちぐはぐなんだ
いくらでも蔑んでいい対象である潜在犯で唯一の社会貢献として執行官をやっている宜野座の方が社会的立場は弱くメンタルも弱かったのに、守ってもらうには朱は強すぎる
もちろん強いからといっていくらでも頼っていいわけでも負担をかけていいわけでも心配しなくていいわけでもないけど、作中で登場する刑事課の人間では朱が最も社会的地位が高く、メンタルもきわめて強く、宜野座に“守ってもらう”対象と見られるほどに弱くは見えない

宜野座は自分の心配した方がいいよ…脚本が潜在犯の人権問題をやるつもりがないにしろ、相変わらず刑事課(や行動課)の外では石を投げられても不思議じゃないからね…

最大多数の最大幸福を成し遂げたシビュラシステムに衛宮切嗣が聖杯にかけた願いの行く末をぶつけてみたい
と思ったけど、どちらかと言えば切嗣がシビュラシステムの統治する社会をどう思うのかだな

汚染されなかった聖杯が勤勉に働いた結果がシビュラシステム統治下の楽園な気もする
まあ免罪体質者の脳が入っているのを“汚染”とみなすかどうかなんだけど

1期リアタイ時、免罪体質者が社会奉仕の刑を寿命が尽きるまで課されることを受け入れたのが不思議だったんだよね そんなに神の意識は魅力的だったのか

PPでの便宜上の推しは宜野座伸元だけど、宜野座本人というより彼に付随する泥沼人間関係が好きだし、まずもってキャラよりストーリーを重視するタイプだし…

葉山のアバター乗っ取り事件での狡噛の「本人よりむしろファンの方がアイドルに期待されるロールプレイをよりうまく実演できたとしても不思議じゃない」という台詞を、制作陣が入れ替わって初期とは別物になった今の状況で聞くのは皮肉なものですね…

青柳監視官のことを話せるようになるまでの宜野座と須郷の話が見たい
あの二人絶対もっとエピソード盛れるのになんでないんですか?

監視官・宜野座伸元のスピンオフ小説はどこの世界線に行ったら読めますか…?

狡噛(180cm)、宜野座(183cm)、須郷(180cm)、花城(170以上?)なので行動課の平均身長が高すぎる

平均身長が高すぎる行動課メンバーがコーヒーとか飲もうとして給湯室の頭上の戸棚を開けて頭をぶつける話を無限に見たい 絶対みんな1回はぶつけてる
花城が「日本人が小さすぎる」と文句を言うのに狡噛がヒールやめればいいだろと余計なこと言って花城に怒られてる

何年か前にPPの小説書いて時間がなくて中断したんだけど、今見返したらもう使えないネタなんだよな…罪を犯さない免罪体質者をどうやって免罪体質者と判断するのか?という話
オチは品行方正な先輩が忽然と消えるやつ たぶんシビュラに取り込まれた
免罪体質者の判定は魔女裁判に似て、罪を犯すその瞬間まで確定せず、確定した瞬間には犯罪者になっている、社会における絶対的な無謬性を汚さずに無謬であることをどうやって証明するのか?って話
と妄想1000%でできてる2期の宜野座と狡噛再会のターン

監視官・宜野座伸元が永遠に世に出ないなら自分で生産するしかないんだよなあ…

2期でのかなり大きな疑問点、宜野座のカウンセラーは鹿矛囲の同級生だったということでいいのか
カウンセラーが1期と2期で名前が違うのに声が同じだから名前は間違いで、親友も父も頼れない宜野座をずっと支えていたカウンセラーもまた味方ではなかったという悲惨極まりない境遇だったと解釈している

宜野座は身の回りの人間に次々と置いていかれるのに自分だけずっと同じ場所で行き続けなければならないという宿命にあったから、行動課への異動と帰還した狡噛と再び肩を並べるという展開によって物語における立ち位置が変わったと思うんですよね

まあ物語が狡噛・朱ペアへ進んでいくようなので宜野座が置いて行かれたという見方も成立しなくはない

御堂がドミネーターに処刑されるところ、縢のドミネーターがエリミネーターに変形してるのにその後ろで宜野座もエリミネーター撃ってるじゃないか 六合塚は撃ってないのに

相手を殺すのはドミネーターではなく自分だと、痛みを感じておく必要があると言う狡噛もやっぱり監視官適性が出るだけあって生真面目だし、この生真面目さが仇となって色相が濁っちゃうんだな

御堂の言う「肉体の縛りから解放され、集合知によって磨き上げられた最もイデアに近い魂」はネット上のアイドルのアバターを指しながら、体を捨てて公平な社会を実現するシビュラシステムを示唆しているようにも見える
だから槙島は御堂に期待外れと言うのかな、シビュラを疑わない人間と同じだから

槙島聖護は悪役として完璧でジェームズ・モリアーティのごとく他者の追随を許さぬ位置にいると解釈していたら、そもそも狡噛に「殺意と手段を組み合わせて新たな犯罪を創造する」と言われていて、これ犯罪界のナポレオンのモリアーティそのままじゃないか

いやほんとPP1期って完璧な構成だな…小さな事件から始まってキャラ紹介と人間模様を手早く済ませ、最初は独立した事件だったのにだんだん犯人側にも思想が見えてきて、事件も1話でなく2~3話に及ぶようになり、犯人も黒幕に利用される小物から槙島の思想に共感している狂人たちに移る

人間にできて動物にできないこととして、宜野座は安全制御(ドローンを暴走させない仕組み)、王陵璃華子は絶望すること(キルケゴールより引用)を挙げている
それぞれドミネーターに対する監視官(引き金は自動ではない)とシビュラシステムに対する免罪体質者(絶望しても社会に否定されない)って感じ

朱の「シビュラシステムはAI」という発言、たとえ砺波に真実を伏せる意図があったとしてもはてしない違和感を覚えたのはたぶん「得体の知れないシステムに身を委ねて盲目の幸福を享受する市民」という楽園の不気味さがこの台詞で決定的に損なわれたからなんだと思う システムを名付けてはいけなかった
1期を見返しても、槙島に腹を切り裂かれてはらわたを晒される前のシビュラシステムは自由意志を持たない統治機構
みんな正体を知らずに盲目的に従うところがビッグブラザーっぽくて、実態が世界統制官

PPPの狡噛よくわかんないなと思って1期を見返してもやっぱりよくわかんない 朱ちゃん視点で狡噛のホワイダニットを探る話でもあるしね

この前マシュマロの返信で書いたPPにおけるルッキズムの話を考えていた
サイコパスが絶対にして唯一の指標と化した社会では差別はすべて潜在犯に向かっていて、他の差別要素は完全とは言わないまでもかなりの部分が消え去っていると感じたんだった

征陸さんがネットに否定的な感じが100年後の日本のふりした現代日本だなと思った大きな要因 オヤジキャラの征陸さんだって生まれたときから携帯通信機器に囲まれてたはずなんだけど
棄民政策やってた時は食糧以外の生活水準はどこまで落ちたんだろうな

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